岡山レース様が製作されたレース地を使用し、御朱印帳の製作をご依頼いただきました。
今回は、製作いただいた御朱印帳のご紹介とともに、御朱印帳制作に込めた想い、新たな挑戦のきっかけについて、岡山レース株式会社 企画営業の國光晴美さんにお話を伺いました。
御朱印帳制作を始めた背景や、当社にご依頼いただいた経緯についてもご紹介いたします。
今回製作いただいた御朱印帳

表紙には、和気神社にちなんだ「猪」柄のレース生地を採用。糸をふんだんに使ったこのレースは、コンピュータ制御の刺繍では再現しづらい、柔らかく温かみのある表情が魅力です。

実際に手に取ると、その立体感ある刺繍に驚かれる方も多く、御朱印帳としての存在感や特別感を一層引き立てています。完成品を確認した際にも、デザイン性・仕上がりともに非常に洗練されており、おしゃれな一冊に仕上がりました。
※こちらの御朱印帳は2021年5月現在、和気神社様で頒布中です。
岡山レース株式会社様、このたびは御朱印帳の製作をご依頼いただき、誠にありがとうございました。
お客様インタビュー
岡山レース株式会社
岡山県赤磐市にある「岡山レース株式会社」は、全国でも珍しい「エンブロイダリーレース刺繍機」を使用しており、この刺繍機の長さはなんと20m、そして高さは4.5mにも及び、昔ながらのレース機が現役で稼働しています。
現在では、機械にもコンピュータ制御が導入され、多くの刺繍作業が効率よく行われています。しかし、その一方で、レースの表情がどうしても硬く冷たくなりがちだそうです。そこで、あえて従来のパンチングカードを使用し、この機械でしか表現できない手作り感と温もりのあるレース作りに取り組んでいます。

アパレル業界の変化を受け、新たに挑戦した岡山レースの御朱印帳製作
日宝綜合製本株式会社 松尾(以下、松): 本日はお忙しい中、インタビューにご協力いただきありがとうございます。まず、御朱印帳製作を始めたきっかけを教えてください。
岡山レース株式会社 國光晴美さん(以下、國): はい、岡山レースは元々アパレル業界で長年、レース生地の製造を行ってきた企業です。様々なブランドからの依頼を受けてブランドオリジナルデザインのレース生地を作り、国内外のブランドに高品質な素材を提供してきました。しかし、最近では量販品や海外製品の増加により、アパレル業界全体の構造が変わり、従来の製造業務だけに依存するリスクが現実的になってきました。
松 : 確かに、変化を感じる部分ですね。そのような背景から、御朱印帳製作に取り組まれたんですね?御朱印帳はアパレル業界とは異なるジャンルの製品ですが、どのようにそのアイデアが生まれたのでしょうか?
國 : アパレル業界の構造変化により、国産レース産業が衰退していく中、生き延びるために新しい取り組みが必要ではないかと感じておりました。そこへ神社様からレース生地を使ったオリジナルのご朱印帳はできないかと相談を受け、この機会に自分たちの強みを生かした新たな商品開発に取り組むことにしました。
また、ファッション業界だけに依存するのではなく、当社の生み出すレース生地の魅力と価値をより多くの人々に届けたいという想いもあり、オリジナル製品の企画が始まりました。

松 : それでは、御朱印帳について、岡山レース様としての特徴やこだわりを改めてお聞かせいただけますか?
國 : 御朱印帳は、小ロットで個性的な素材を使うことができるため、私たちの感性を最大限に活かすことができるアイテムです。宗教的な価値や記念品としての側面もあり、感性豊かな商品作りにぴったりだと感じました。また、地元の素材や技術を生かすことにもこだわり、岡山で全ての製品を完結させることを目指しています。
地元の企業との連携と品質への信頼が決め手
松 : なぜ弊社に御朱印帳の製作を依頼いただいたのでしょうか?
國 : まず、御朱印帳を作るにあたって、最も大事だったのは「地元で作る」ということでした。岡山の素材を活かし、製造も全て岡山で完結させることができる製本会社を探していました。そんな中、たまたま日宝綜合製本の本社の近くを通ることがあり、ここで製品を作れたらいいなと考えていたんです。実際に話を聞くと、地元にこだわりを持ちながら、細かな調整にも柔軟に対応してくださるという点が非常に魅力的でした。
松 : それはご縁があったんですね。地元の企業との連携というのは大切なポイントですね。
國 : そうですね。また、最初は不安もありましたが、実際にやり取りを重ねる中で、製本の技術や製品の仕上がりに対するこだわりを感じました。御朱印帳は見た目の美しさだけでなく、使い勝手や耐久性も大切です。そうした部分をしっかり理解していただけて、スムーズに進めることができました。

1回目の仕上がりに改善点、2回目で完璧な仕上がりに
松 : 弊社で御朱印帳をご依頼いただいて、どのような点が特に印象に残りましたか?
國 : 一回目は思うようなクオリティーが出なかったけれど、二回目には100点満点の仕上がりを出していただき、本当に驚きました。
松 : ありがとうございます!初回は、レースならではの“凹凸”によって、貼り作業が非常に難航しました。

松 : 見た目には美しい刺繍レースですが、その立体的な質感が製本工程では大きな障壁となり、通常の機械貼りでは圧が均一にかからず、浮きやズレが生じるという問題が発生しました。これにより、仕上がりにムラが出たり、検品段階で不良品と判断されるものが多数生まれてしまいました。「これは難しいからできない」ではなく、「どうすればこの素材に合った最適な方法で仕上げられるか」を徹底的に追求しました。
機械作業だけでは対応しきれない部分については、職人の手作業を巧みに組み合わせることで、機械では再現できない繊細な対応を可能にしました。この“機械×手作業”のハイブリッドな工程により、レースの立体感を損なうことなく、美しく丁寧に仕上げることができました。
國 : 最初は本当に不安だった。レース素材が御朱印帳に使えるのか心配だったけれど、2回目は驚くほど綺麗な仕上がりで、“これなら絶対に大丈夫”と確信できました。
松 : 良かったです。ありがとうございます。

國 : 和気神社様も「ほかの御朱印帳よりも断然書きやすい」と言われていました。
松 : ありがとうございます。この“書きやすさ”は、単なる使いやすさだけでなく、御朱印の手書き部分に想いを込めやすいという点でも非常に価値の高いポイントであると、私たちも感じています。用紙は書きやすく、滲みにくい特別な奉書紙を使用しており、裏写りしにくい2枚重ね構造になっています。
信頼できる業者選びと品質優先の取り組みが成功の鍵
松 : では、御朱印帳をこれから作られる方にアドバイスはありますか?
國 : 一番大事なのは、やはり「信頼できる業者を選ぶこと」です。御朱印帳を作る際、価格だけで決めるのではなく、品質を最優先に考えています。最初に価格を安くしようと思うと、品質が下がるリスクがあるので、その部分をしっかり理解して業者選びを進めることが大切です。私たちは信頼できる業者と長期的な関係を築きたいと考えています。
松 : 価格だけで決めるのではなく、信頼できる業者選びが重要ということですね。業者選びのポイントについて、もう少し具体的に教えていただけますか?
國 : はい、業者選びでは、地元企業を選ぶことも大きなポイントです。地元企業であれば、細かな調整や変更にも素早く対応してもらえる点が非常に魅力です。品質を確保しつつ、フレキシブルに対応してくれる企業との長期的な信頼関係が重要だと考えています。価格が安いからと言って品質が劣るものを選ばないようにしています。
松 : なるほど、地元企業の強みや信頼関係が大事ですね。業者選びにおいて、利益の部分も考慮しないといけない点についてはどうお考えですか?
國 : もちろん、業者さんにも利益は必要です。ただ、利益追求を過度に求めすぎると、品質や納期が犠牲になることがあります。私たちは、長期的に良い品質の商品を作り続けるために、業者さんと良い関係を築くことが最も大事だと考えています。そのためには、双方が納得できる形での協力関係を築くことが必要だと思います。
松 : 確かに、信頼関係を築くことが、長期的な成功に繋がりますね。利益だけを追い求めず、品質を最優先にすることが、最も大事な点だと感じます。
國 : その通りです。最終的には、品質を重視し、お客様に満足していただける商品を作り続けることが一番大切だと思っています。

國 : あと、心を込めて作ることです。物を作るだけではなく、その背景や意味をきちんと伝えることが重要です。御朱印帳は単なるアイテムではなく、神社とのご縁を深める大切なものですから、そのことを理解して作ることが大切だと思います。
今後は日宝さんと一緒に、何か面白い形でコラボレーションできればと思っています。お互いの強みを活かして、より魅力的な商品を作り上げることができるのではないかと思います。
松 : それは嬉しいお話ですね。お互いに協力できる点があれば、ぜひ一緒に取り組んでいきたいですね。本日はお忙しい中、ありがとうございました。